「教育カウンセリング」は、福井新聞「NIE教育」のコーナーに当センター職員が執筆し掲載されたものです。<福井新聞社提供>
自閉症の息子、来年就学心配 2002年 6月17日 掲載
ことばの発達遅れる5歳児 2002年 9月16日 掲載
授業に集中できない息子 2002年10月 7日 掲載
授業で聞き返しが多い小1 2002年12月23日 掲載
誰とも話をしない小1女子 2003年 5月26日 掲載
自閉症の兄のこと娘にどう説明する 2003年 8月 2日 掲載
勉強についていけず進路に悩む中3生 2003年10月 6日 掲載
年中組園児の娘に言葉、生活面の遅れ 2003年11月24日 掲載
初めての場所や物 嫌がる娘にどう対応 2004年 5月24日 掲載
「高機能自閉症」の小1の息子 目を離すと家の壁や本に絵 2004年10月11日 掲載
かみ合わない級友との会話 無神経な言い方でトラブル 2005年 5月30日 掲載
次々と遊びが変わる子 母親のかかわり方は 2005年10月17日 掲載
障害のある息子の就学 遠い養護学校は心配 2005年12月19日 掲載
教室での課題に集中できない子 担任のかかわり方は 2006年 5月29日 掲載
アスペルガー症候群診断の中1の生徒 担任のかかわり方は 2006年10月30日 掲載
友達と遊ばない、慣れない課題に参加にしくい5歳児へのかかわり 2007年 4月16日 掲載
AD/HDの5年生男児へのかかわり 2007年10月 1日 掲載
発達遅れの子 就学先が心配 2008年 4月 5日 掲載
集団行動を嫌がる園児への対応 2008年 6月14日 掲載
アスペルガー症候群診断の小6の児童 中学校生活に向けて 2009年 1月31日 掲載
小1の娘 登校渋るように 2009年 4月25日 掲載
算数苦手の息子 教えるコツは? 2009年 8月15日 掲載
 自閉症の息子、来年就学心配
息子は来年就学を迎えます。医師から自閉症と診断されています。同年齢の子と比べるとできないことが多く、どのような学校に入学させるのがよいか迷っています。

手助けの必要性整理を
 自閉症のお子さんを育ててこられ、今までいろいろ悩み、ご苦労されてこられたことと存じます。来年の就学を考えると一層ご心配なことでしょう。
 それでは、就学について一緒に考えてみましょう。
 自閉症のお子さんは、対人関係を中心に特徴的な行動をとります。また、知的な発達にも個人差があります。そこで、まず就学について考えるこの時期にこそ、お子さんの状態を正しくとらえ直してみることが大切です。
 できることや困難なことだけでなく、興味のあることや表現の方法、人とのかかわり方など、日常生活や学習の場面で、どのような手助けがどの程度必要なのかを整理しておきましょう。それが、お子さんに合った学校を考えていく上で非常に役立ちます。
 次に情報収集です。先輩の保護者から話を聞くことも一つの方法ですが、当センターで行っている学校ガイダンスを聞いたり、各学校で行っている学校見学会や体験入学に参加したりすることもよいでしょう。お子さんにって適切な場を判断するために、ご両親の目で確かめることをぜひお勧めします。
 就学先としては小学校の通常学級のほか、特殊学級や通級指導教室、養護学校があります。通級指導教室では、通常学級に籍を置きながら週に数時間の個別指導が受けられますが、県内には数少ない現状があります。
 特殊学級や養護学校では、一人ひとりの発達や障害の状態に応じた教育を行うため一学級あたりの児童数は少なく、お子さんの状態に合わせて学習できる環境が用意されています。ここでは、円滑な集団参加を促す指導や日滞生活の指導、ルールのある遊びなどのきめ細かい指導が受けられます。
 就学先を決めるに当たっては、就学相談会、就学指導委員会、就学時健康診断を経て、市町村の教育委員会が保護者と十分に相談しながら進めていくことになっていますので、遠慮なさらずに教育委員会へお問い合わせになればと思います。
 学校は、お子さんのより良い人生の基礎を築く大切な場所です。お子さんが自信を持ち、毎日楽しく生き生きと過ごせる学校を選ぶことが最も大切なことだと思います。
(福井新聞 平成14年6月17日掲載) 

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 ことばの発達遅れる5歳児
5歳の息子は、ことばの発達に遅れがあります。最近ようやく簡早なことばのやりとりができるようになりました。園での出来事についても、単語程度ですが話してくれるようになりました。しかし、好きなおもちゃを選んだり、自分が行きたい所を伝えたりするためのことばは、まだ出ません。また、自分の思いを表現することも苦手です。息子のコミュニケーションの力を伸ばすためにはどのようなかかわりがよいのでしょうか。

まず気持ち受け止めて
 私たちは、自分の思いを伝えるために、手立てとして話しことばを使っています。ですから、うまく話しことばか出てこないと、人とのコミュニケーションが難しいと思ってしまいます。しかし、本当にそうでしょうか。
 コミュニケーションのためには、伝える側だけではなく、そわを受けとる側の配慮がとても大切です。まずは、お子さんのおかれている状況を理解し、どのような気持ちを伝えようとしているのかということについて、目を向けてみてください。それでは、コミュニケーションの力を伸ばすためのかかわり方のポイントを整理してみましょう。
(1)お子さんのサインを見つけましょう
 まず、家庭生活でのお子さんの状態をじっくり見つめ、よく理解してあげましょう。そして、その様子から、何らかのサインが出ていないか確かめましょう。ことばを育てようとして、お母さんからの問いかけが多くなりがちですが、子どもはことばにならない形での表情や身ぶりなどで多くのサインを発しているものです。
(2)お子さんの好きなことを見つけましょう
 次にお子さんのやりたいことや好きなことを見つけてあげましょう。ことばの発達の遅れに目が向いていると、お子さんがどんなことを好きなのかを見落としがちになります。お母さん自身がお子さんの好きなことをどれくらい知っているか、いま一度振り返ってみてください。
(3)お子さんいっしょに楽しんでみましょう
 「お母さんもいっしょにやりたいなあ」とことばをかけながら、お子さんといっしょに好きな遊びを楽しんでみましょう。そうすることで、お母さんの寄り添う気持ちが自然に伝わり、お子さんの自発的なコミュニケーション意欲が促されます。ことばよりもそれ以前に、お子さんの気持ちを受けとめながら共感できる生活経験をつみ重ねることが、コミュニケーションの力をはぐくむことにつながっていくと思われます。
(福井新聞 平成14年9月16日掲載) 

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 授業に集中できない息子
小学校に入学した息子は、授業に乗中できず課題を途中で投げ出したり、友達の邪魔をしたりします。夏休みに、医者から、ADHD(注意欠陥/多動性障害)と診断されました。息子を認めてくださる方はいると思うのですが、最近「ぼくはみんなと違う。ぼくはダメなんだ」と言うようになりました。どうすればよいのでしょうか。

苦手なことを一緒に克服
 期待を持って迎えた学校生活になかなかなじめず、お子さんもご両親もつらい思いをされていることでしょう。では、お子さんへの支援について、一緒に考えてみましよう。(1)お子さんの今の状態について理解しましょう
 ADHDは、しばしば注意がそれる、よく動き回る、とっぴなことをするなどの症状が目立ちますが、それは故意ではなく、自分をコントロールする力が弱いためにおこります。その結果、学業に集中できずに学習内容が分からなくなったり、友達関係がうまくいかずに仲間はずれにされたりして、自信をなくすことがあります。
 こういったお子さんは、学業や友達関係で「うまくやりたいのに思うようにやれない、ぼくってダメなのかな」といった自己否定感や不安感をもちやすいのです。今、お子さんは、例えば、いつも時間割が合わせられない、みんなの半分もドリルができない、徒競走で完走できないなどのことが積み重なって、生活全般に自信をなくしているのではないでしょうか。
(2)お子さんのよきサポーターになりましょう
 まず、お子さんが苦手なことには、誰かと一緒にやり遂げることで、できたという成就感がもてるような支援をしましょう。家庭では、寝る前に一緒に時間割を合わせてかばんを玄関に置いておく、親子マラソンに参加して一緒に完走するなどはいかがでしょう。学校では、先生に相談し、ドリルの量を半分にしてみんなと終わる時間を一緒にしたり、手つなぎ鬼ごっこで友達と一緒に遊んだりといった配慮をしてもらえるといいですね。
 また、お子さんのやる気が出るように、得意なことを生かして、周囲から認められるような支援をすることもよいでしょう。一緒に小物を作って部屋や教室に飾る、写真係になってデジタルカメラで行事の記録をするなど、いろいろと工夫ができそうです。
 このようなかかわりを通して励ましていけば、お子さんは、自分の力を一つ一つ確認しながら自分らしさを感じとっていけると思います。これからも、ご両親は、お子さんの身近で頼れるサポーターでいてください。
(福井新聞 平成14年10月7日掲載) 

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 授業で聞き返しが多い小1
担任している小学一年生の男児のことでご相談します。難聴のような問題はないのですが、授業場面では、何度も聞き返したり、聞き違いが多かったり、的外れな答えを言ったりします。
集団活動でも、指示したことが分からず、周りの子の様子を見て慌てて行動することがよくあります。最近では、集中力や落ち看きがなくなってきていることも心配です。

集中や理解に手助けを
 このお子さんは「きくこと」に困難を示しているようですね。きくことが困難と言ってもその原因はさまざまですが、ここでは聴覚に問題がない場合について考えてみましょう。
(1)お子さんの様子をよく観察しましょう
 まず一つ目に、耳から入ってくる音を聞き分ける力が弱いということが考えられます。たくさんの音や声の中から特定の声だけを聞き分ける力が弱いと、教室の中の雑音や声がみんな同じ強さで聞こえてきます。そのため、集団の中での指示が聞き取れない、先生の話に集中できないといったことが起きるのです。
 また、先生の声が耳に入っても、ことばの一つ一つの音の聞き分けが悪いため、その意味が理解できずに、意味を取り違えてしまうといったことも考えられます。
 二つ目に、記憶の弱さが関係している場合があります。指示された内容を忘れて、聞き返してきたり、いくつかのことを一度に言われると、全部覚えていることができず、指示通り動けなかったりします。
 このような場合、話の内容が聞き取れない、授業が理解できないなどで、やる気や集中力がなくなり、学習の遅れや自信喪失につながりかねません。
(2)学級内でできる配慮や工夫を心がけましょう
 例えば、話すときの配慮として、子どもの正面から目を見て話をする、注意を引きつけてから話し始める、理解しやすい話し方を心がけるなどがあります。ほかにも、聞きやすい環境を整える、机の位置を工夫する、絵や写真・カード・板書・メモなどの視覚的な手がかりを使って集中や理解を助けるといったことも効果的です。また、聞き返すことは恥ずかしいことではないことをお子さんに伝え、励ましてあげましょう。
 家庭との連携も大切です。学校ではどんなことに配慮しながら指導していくのかを保護者に伝え、家庭の協力を得ながらお子さんの成長を支援していきましょう。
 このお子さんのような場合は、きくことにつまずきのある学習障害(LD)とも考えられます。当センターでは、LDなどの判断や理解・支援について学校へ訪問する形でサポートしています。お気軽にお電話ください。
(福井新聞 平成14年12月23日掲載) 

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 誰とも話をしない小1女子
小学校で一年生担任していますが、クラスに誰とも話をしない女の子がいて心配です。授業中
も本読みや発表は全くしません。休み時間は一人で好きな絵を描いて過ごしています。私が話しかけると目を伏せてしまいます。でも、家庭ではよくしゃべり、学校であったことなども話しているそうです。担任としてどうかかわればよいか教えてください。

強制せず自己表現の場を
 誰とも話せずに過ごすお子さんがクラスにいるのは担任として本当に心配ですね。このようなお子さんへの支援について一緒に考えてみましよう。
(1)お子さんの気持ちを理解し、信頼関係を育てましょう
 お子さんが話しをしないからといって先生や友達とのかかわりを拒否しているとは限りません。話したくても緊張して話せなかったり、集団生活に不安をもっていたりする場合があります。まずは、先生がお子さんの気持ちを理解してあげながらかかわる存在として信頼関係を育てることが大切です。
(2)お子さんが安心して自分を表現できる場をつくりましょう
 話すことを強制したり、順番に当てたりするなどの対応は逆効果です。話をさせることだけにこだわってしまうと、かえってお子さんを追い込み、ますます閉じこもらせてしまいます。お子さんにとって学校が安心して自分を表現できる場になるようにかかわることが大切です。それにはまず、文字や身ぶり、視線など、先生とお子さんとのコミュニケーションの方法を焦らずに探してみるとよいでしょう。
 お子さんとのかかわりは話し言葉だけではありません。お子さんと先生との距離を近づけるかかわり合いの中に、お互いが分かり合えるコミュニケ一ションの方法がきっと見つかると思います。
 次に、お子さんが好きなことや得意なことで自己表現できるように配慮してあげましよう。休み時間に一人で絵を描いていることも自己表現の一つです。授業の中で、お子さんの得意な活動を取り上げてほめてあげたり、クラスの友だちと互いに認め合う機会を増やしたりすることで、自信や意欲を育てましょう。
 とにかく、焦らず、あきらめず、お子さんが心を開き、成長していくのを手助けしてあげることが大切だと思います。
(福井新聞 平成15年5月26日掲載) 

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 自閉症の兄のこと妹にどう説明する
小学三年の自閉症の男の子の母親です。同じ学校に通う一年生の娘が、最近「どうしてお兄ちゃんは、うまくお話ができないの」と聞いてくるようになりました。学校では集会の時に大声をあげたりする兄のことで、友達にからかわれることもあるようです。兄のことについてこれから妹にどのように話していくとよいのでしょうか。

話し合いで理解を広げて
 成長に伴い、お兄さんとの違いを感じ始めた妹さんに、お兄さんのことをどのように理解させていくとよいのか悩んでいらっしゃるようですね。
(1)自然に少しずつ
 お兄さんの障害について小学校1年の妹さんがすべてを理解するのは難しいことですね。
しかし家族ですから、一緒に生活する中で、お兄さんの好きなこと、できること、そして苦手なことを妹さんなりに感じ始めていると思います。まずはお兄さんのことについて妹さんとじっくり話し合ってみましょう。お兄さんの行動やそれに対するお母さんの接し方などについて、わかりやすい言葉で説明してあげるとよいですね。また、誰でも得意なことと苦手なことがあることや、お兄さんはほかの人よりも時間はかかるけれど、少しずつできることが増えていることなども話してあげるとよいでしょう。
(2)学校での配慮を
 子どもは不思議に感じたことをすぐに言葉にします。妹さんの友達も、集会の時に大声をあげたりするお兄さんのことを「おまえの兄ちゃん変だぞ」と悪気なく言ったのでしょう。まずは妹さんの担任の先生に相談してみてはいかがでしょうか。息子さんがふざけて大声を出しているのではないことや自閉症の特徴などについて、担任の先生を通して校内の子どもたちやほかの保護者に話してもらうと、理解も広がると思います。
(3)妹さんの気持ちを受け止めて
 親としては兄弟に同じように愛情を傾けているつもりでも、現実的にはお兄さんは小さいときから心配な面が多く、手がかかることが多かったと思います。ご両親が障害のあるお兄さんを大切に育てる姿を見て、妹さんも多くのことを自然に学んでいると思いますが、時にはお母さんを独り占めしたいと思うこともあるでしょう。日々の生活の中で妹さんと二人でお風呂に入ったり、買い物に出かけたりするときなどに、妹さんの気持ちを十分受け止めてあげるとよいですね。自分にも親の愛情が注がれていることを実感できることで、障害のある兄弟に対してやさしい気持ちになれると思います。
(福井新聞 平成15年8月2日掲載) 

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 勉強についていけず進路に悩む中3生
中3の子どものことです。小学校のころから勉強についていけず、学校に行きたがらないこともありました。先生から特殊学級を勧められましたが、みんなと一緒に勉強してほしいと思い、通常の学級で指導をしていただきました。しかし、ここへきて、現実的に高校進学はとても無理だと感じています。かといって、仕事に就いて長続きするようにも思えません。どうすれば・・・。

進学を選び生きる力を養おう
 将来に向け、ご家族でしっかり話し合い慎重に判断する必要があります。
(1)生き生きとした学校生活を
 特殊学級への入級を断ってこられたとのこと。他の友だちと同じ教育環境で育てたいというお気持ちからの選択であったのでしょう。ただ、今、進路を考えるにあたり、本人がこれまでの学校生活をどう受け止めてきたのかを振り返ってみてはと思います。「学校に行きたがらないこともあった」ようですが、これまでの学校生活はお子さんにとってどのようなものだったのでしょう。
 学校は勉学の場であるとともに、友だちに受け入れられ、時には自分が主体的に活動をリードできる自己実現の場でもあります。そして、学校生活での自己実現の機会が実は将来を生きる上で自分自身を支える大きな力となります。
 こう考えればこのような機会を得るためにも、ぜひ、進学をお勧めしたく思います。
(2)養護学校高等部について
 進学先として定時制や単位制の高校、専門学校なども考えられますが、ここでは選択肢の一つである養護学校高等部をご紹介します。
 高等部には、中学部からの生徒だけでなく特殊学級卒業生も在籍しています。また、通常の学級の卒業生が進学することもあります。要するに高等部は、発達障害などにより通常の学習方法では力をつけていけない子どもたちにとっての大切な後期中等教育の場なのです。
 また、指導は教科学習のほかに、自立生活や職業生活に向けての実践的な内容が中心に展開されます。特に企業などで仕事を体験することで職業生活を学ぶ「産業現場等における実習」では、卒業後の就労に向けての具体的な手がかりが見つかると思います。
(3)進路相談を
 いずれにせよ、ご家族や本人の意思をしっかり確認しながら、担任に相談されるとよいでしょう。なお、高等部への進学に際しては、専門機関による診断やそれに伴う検査が必要となります。当センターでも相談に応じますので、お気軽にご連絡ください。
(福井新聞 平成15年10月6日掲載) 

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 年中組の園児の娘に言葉、生活面の遅れ
四歳の娘は現在保育園の年中クラスに通っていますが、言葉や生活面など、発達に遅れがあります。再来年度には就学を迎えますので、まだ早いかもしれませんがそろそろ学校のことを考えていかなくてはと思います。特に就学の一年前になると、教育委員会の方と話し合うような機会もあると聞いてはいるのですが、詳しいことが分からず心配です。

教育委員会の就学相談の利用を
 発達の遅れなどから配慮が必要なお子さんの就学についでは、必要な情報を得る機会が少ないため、保護者の方にとってはご心配なことと思います。
(1)相談から就学までの主な流れについて
 名市町村の教育委員会では、発達に気がかりな面のあるお子さんを対象とした就学相談を、おおよそ六月から八月にかけて始めます。相談の機会は園を通じて紹介されることが多いのですが、特に紹介がない場合もありますので、ご心配であれば園の先生やお住まいの市町村教育委員会に問い合わせていただくとよいでしょう。
 教育委員会には障害児教育に携わる教師、医師、心理の専門家らで構成される就学指導委員会があり、保護者との相談、お子さんの発達検査や行動観察、医師の診断などを通して、よりよい教育の場について総合的に助言をします。教育委員会では、このような助言を踏まえながら相談を進めていきますが、就学先の決定は、あくまでも保護者との十分な話し合いを通して行われますので、遠慮なさらずに安心してご相談ください。また、そのためにも、就学先についての情報をしっか把握しておくことが大切です。就学先の学校が決まると、翌年の一月末までに「就学通知書」が保護者に届けられることになります。
(2)情報を得る機会を積極的に活用しましょう
 就学先としては、大きく分けて小学校と盲・ろう・養護学校があり、小学校には通常学級のほか、特殊学級や通級による指導教室があります。盲・ろう・養護学校には、相談窓口が設けられており、就学相談の時期に合わせて学校見学会や体験入学などを実施していますので、学校に直接お問い合わせください。
 小学校については各市町村教育委員会が窓口となっています。また、当センターでも、いくつかの市町村で巡回教育相談会を開いたり関係学校の相談担当者を招いての学校ガイダンスなどを行って、就学についての相談に応じています。これらの機会を積極的に活用され、実際に見たり聞いたりしながら、お子さんに合った学校について考えていかれるとよいでしょう。
(福井新聞 平成15年11月24日掲載) 

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 初めての場所や物 嫌がる娘にどう対応
5歳の娘のことです。初めての場所を嫌がったり、特定の物に対するこだわりがあります。そのため、家族で遠出のドライブに行きたくても、初めてのレストランやトイレには入れない等の問題があり、なかなか出かけられません。3月には修園旅行が計画されています。今後、どのようなかかわり方をしていけばよいか教えてください。つい先日、医療機関を受診して、広汎性発達障害と診断されました。

ドライブ中の食事についてはお弁当を用意することで対応できますが、トイレについては年齢的にもおむつの使用は難しく、お困りでしょうね。ではかかわり方について一緒に考えてみましょう。

広汎性発達障害とは?
 一般的には「自閉症」ということばで表現されていますが、近年「広汎性発達障害」とも言われるようになりました。行動の特徴としては@他児(者)との交わりが苦手、Aコミュニケーションが取りにくい、B遊びや行動がパターン化されている等があります。

かかわり方について
 お子さんの行動の特徴を理解したかかわり方をすることがとても大切です。トイレにこだわるのは、本人にとってそうしてしまう理由があり、大きなエネルギーが注がれているのです。そこで、原則的には抑えつけずに見守り、必要な支援をしていくようにします。
 (1)行動範囲を広げる
 限られた場所やパターン化された活動では落ち着いていることもあり、その殻を破ることに親子共々躊躇しがちですが、それではなかなか行動範囲が広がりにくくなります。まずは、よく利用するショッピングセンターのトイレに入ってみるなどして、外のトイレを利用する機会を増やしてみましょう。少しずつ新しい経験を広げていってはどうでしょうか。
 (2)予定は明確に伝える
 予測できないことや変化に対して苦痛を感じることが多い面もあるので、いつ、何が予定されているかということをなるべく前もって伝えましょう。絵や写真でドライブの行き先やどこでトイレに入るか等スケジュールを示してあげると、より分かりやすいと思います。
 (3)予定の変更の練習をする
 現実の生活の中では予定通りにいかないことがたくさんあります。そこで、お子さんの気持ちに余裕があるときに「変更の練習」を少しずつしていくことも大切です。たとえば事前に知らせておいた予定を一週間前に変更し、それができるようになったら一日前に変更してみましょう。何度か変更を経験することでお子さんなりの見通しを立て、行動できることが増えていくと思われます。

(福井新聞 平成16年5月24日掲載) 

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 「高機能自閉症」の小1息子 目を離すと家の壁や本に絵
小学1年生の息子は「高機能自閉症」との診断を受けています。絵を描くことが好きで、見たものを思いだして細かいところまで描きます。しかし、目を離すと白い壁や、棚に並べてある本にもマジックやクレヨンで絵を描いてしまい、きつくしかるとパニックを起こしてしまいます。どうすればよいでしょうか。

注意よりルールづくりを
 家の壁や大切にしている本に絵を描いてしまうというのは困りますね。それでは、高機能自閉症について特徴を整理しながら、一緒に考えていきましょう。
 一般的に自閉症のお子さんは、人とのかかわりやコミュニケーションが一方的で、ルールに従って遊んだり、相手の気持ちを理解したり、自分の気持ちを言葉で表現したりすることが苦手です。そのため、言葉で注意されるだけでは、何がいけないのかが分かりません。また、こだわりが強く、風味のある活動を急に止められたりするとパニックを起こし、気持ちの切り替えができずに、なかなか次の行動に移れないことがあります。その半面、マークや数字など興味をもったことには、すばらしい記憶力や計算力を示すことがあります。言葉での表現が苦手な分、絵を描くことで自分の気持ちを表現することが得意だったりすることもあります。
(1)絵を描く場所や物についてルールを
 今回のご相談の場合、絵を描くことには何も問題がありません。むしろ、どこに描くのかが問題なのですから、絵を描くときの場所を決めて、そこに紙やマジックを置くなど、絵を描く際のルールをつくるとよいでしょう。
(2)視覚的な手がかりを使って伝えて
 もちろん「壁や本に絵を描くことはいけない」ということを教える必要もあるでしょう。
マークや絵カードといてた「視覚的な手がかり」を使ってみてください。倒えば「絵はスケッチブックに描きましょう」「壁には絵を描きません」などと、本人に注意を促すものを本人の目につくところに分かりやすく提示していくこともよいでしょう。
(3)絵を通してお子さんとのかかわりを広げて
 絵を描くことは、自分の気持ちを表現する大切な手段であると思います。描いた絵を使って親子で会話したり、お子さんの興味を広げていったりできるとよいですね。一緒に楽しい時間を過ごしていただきたいと思います。
(福井新聞 平成16年10月11日掲載) 

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 かみ合わない級友との会話 無神経な言い方でトラブル
担任している小学五年生の男児のことです。クラスの友達に積極的に話しかけるのですが、興味のあるアニメの話ばかり一方的に話しがちで、会話も何となくかみ合いません。女の子に向かって「足太いね」などとカチンとくるような言い方も平気でするので、よくトラブルになり、相手にされないことが多いです。無神経で気ままな子に思えるのですが、本人は、「なぜ自分ばかり責められるのかわからない」と訴えてくるようになりました。最近は元気がなく、時々学校を休むようになり、心配しています。
 担任の先生としてもご心配ですね。ご相談の内容から、このお子さんは「わざとやっている」のではないようですね。もともと対人関係に苦手さをもっているお子さんかもしれません。
(1)まずはお子さんのつまずきを理解しましょう
 このようなタイプの子どもさんは、ことばの比喩や冗談が分かりづらかったり、相手の表情から気持ちを読みとるのが苦手であったりすることがあります。また、自分の言ったことが相手にどう思われるか想像することが難しいために、思ったままのことをストレートに言ってしまうこともあります。
 そのため、自己中心的で気ままな子とみられがちですが、まずはお子さんのつまずきを理解しようとする姿勢が大事だと思います。
(2)お子さんの支援者になりましょう
 まず、努めてお子さんの話したい話題につき合う時間をとり、本人の気持ちを満足させてあげましょう。その中で、あいづちをうったり質問したりして、楽しい会話のやりとりができていくといいですね。また、機会をとらえてお子さんのいいところを認め、ほめていくようにしましょう。学校の中で安心して自分を表現できる場があること、好きなことやがんばっていることで自信がもてること、楽しいと感じる時間を過ごせることがとても大切です。
 さらに、なぜ自分が責められるのかと訴えてきたら、それはじっくり話し合うチャンスです。友達とのやりとりの中で、誤解したとらえ方をしているときには、わかりやすい絵カードなどを利用して、状況を具体的に説明してあげましょう。適切な答え方や振る舞い方について、一つ一つ丁寧に教えていくことが必要だと思います。
 学校を休みたがるような問題については、周りの理解を得られないことが原因となっている場合もあります。担任の先生が周りの友達とお子さんの間の橋渡し役となり、互いに理解し合えるようにサポートしてあげてください。
(福井新聞 平成17年5月30日掲載) 
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 次々と遊びが変わる子 母親のかかわり方は
今年から保育園に入園した4歳になるの子どもの母親です。先日、園の懇談会で保育士さんから、「他の子どもさんとは仲良く遊んでいるのですが、どうも遊びが次々と変わります。また、課題活動のように、皆と同じ事をする場面では、途中でその場を離れてしまい、一人違ったことをしています」と言われました。そう言われてみると家でも落ち着きはなく、あちこち走りまわっていてじっとしていませんし、遊びも次々と変わります。このような状態の我が子に、母親としてどのようにかかわっていったら良いのでしょうか。
 お母さんは、家庭でのお子さんの様子から、落ち着きのなさを感じておられるようですね。そのことが園生活の中でも見られるという話を保育士さんから聞かされて、さぞかし御心配されていることでしょう。それでは一緒に考えてみましょう。
(1)子どもは成長するための情報収集をしています
 小さい子どもは一般に落ち着きのないものです。『いろんな物を引っ張り出し、これで遊んでいたかと思ったら、別の所で違ったことをしている』といった一見落ち着きのない行動も、実は子ども達にとって、情報収集の大切な活動なのです。新しい物を見つけると、それが何なのかを探るために、見たり触ったり、あるいは体を動かしたりします。そういったことを通して、子ども達は様々な知識や運動機能を身につけていくのです。子どもの「やってみたい」「これ、何だろう」等という気持ちは大切にしてあげたいですね。お子さんが、発見したり驚いたり不思議がる気持ちに共感しながら、お母さんがじっくりとかかわってあげることで、少しずつ集中力をつけていくことができると思います。
(2)活動圏の情報を整理してあげましょう
 子どもの脳は、一度に処理できる情報量に限界があります。その為、成長していくのに必要な情報も過剰すぎると邪魔な情報になってしまいます。例えば、お子さんが少し前までお絵描きや玩具で遊んでいたのに、今度は近くに置いてある絵本に興味が移って、いきなり活動が中断・終了してしまうように思えることがあります。こういう時は、大人が少し情報の整理をしてあげることが効果的です。
 ・机や棚の上にいろんな物を置かない
 ・使わない道具や玩具は棚に片付ける
 ・棚に片付けられない大きな物は布等で隠す
等、環境面でお子さんの周囲の情報を整理してあげましょう。
(3)園と家庭でのかかわり方に共通性を
 お子さんにとって保育園は、一日の大半を過ごす家庭と同じくらい大切な生活の場です。その為、保育園と家庭との連携は必要不可欠です。日々、家庭と園とでお子さんの様子やお子さんへのかかわり方を連絡し合い、より良い環境作りやかかわり方について、一緒に考え実行していくことが必要だと思います。
(福井新聞 平成17年10月17日掲載) 
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 障害のある息子の就学 遠い養護学校は心配
保育園に通う4歳児の男児の母親です。息子には障害があり、移動や食事、排泄など生活面での介助が必要です。また、ことばもありませんが、保育園の友だちが遊んでいる様子を見て、声をあげて笑ったりします。再来年は就学を迎えます。障害のある子が通う養護学校があることは知っていますが、地域から離れて別の学校に行くことが心配です。また就学にはどのような手続きがあるのか分からず不安です。

 障害のあるお子さんの就学先については、お子さんの発達を促す丁寧な支援を求める一方、保育園での友だちとのかかわりや地域とのつながりも大切にしていきたいというお気持ちもあり、様々な心の葛藤があって当然のことと思います。
 就学先としては、地域の小学校と盲・聾・養護学校があり、小学校には通常学級と特殊学級、通級による指導教室があります。これまでは、障害の種類や程度に対応して教育の場が定められるという就学指導が中心でしたが、現在は、その辺りも少しずつゆるみ、一人一人の特別な教育的ニーズを把握した教育現場のあり方とその対応が求められるようになってきています。お子さんに合った学校を選んでいくために、まずは就学先として考えられる学校を見学し、よく知ることが大切でしょう。養護学校では、個に応じたきめ細やかな指導が展開されており、最近では地域とのつながりを大切にするための居住地校交流などが行われています。一方、小学校では地域の中でいろいろな刺激を受けながら、集団での育ちが期待されます。子どもさんの育ちを大切にした適切な支援のための校内支援体制づくりなどの動きも小学校には出てきています。それぞれにメリット、デメリットがありますので、ご家族で、お子さんにとってこれからの学校教育の中でどういうことを育ててもらい、何を大切にしていきたいかについて子どもさんの幸せを充分に考えながら話し合われることが大切だと思います。
 就学についての相談の窓口は、お住まいのある市町村教育委員会となります。また、当センターでも巡回教育相談会や学校ガイダンスなどを開催して、相談に応じています。また、盲・聾・養護学校でも相談窓口を設けて、体験入学や学校見学会をなどを実施していますので、一度お問い合わせになり、ご相談をなさってみてはいかがでしょうか。
 では、次に具体的な手続きについてご紹介しましょう。教育委員会では、発達に気がかりな面のあるお子さんを対象とした就学相談を六月から八月にかけて行います。教育委員会には、教育学、医学、心理学などの専門家で構成されている就学指導委員会があり、保護者との相談、お子さんの発達検査や行動観察の結果等を踏まえて適切と考えられる就学先を審議します。就学先の決定は保護者の意見も総合的に考慮した上で行われますので、納得のいく就学となるようにできるだけ相談を重ねられることをお勧めします。。
(福井新聞 平成17年12月19日掲載) 

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 教室での課題に集中できない子 担任のかかわり方は
今年度から担任している小学三年生の男児のことで相談します。音読や計算は得意で学力に問題はありません。ところが、課題に向かう時なかなか集中ができず、周りの子に話し掛けたり、席を立って歩き回ったりします。その都度、注意しますが状況は変わりません。最近では、周りの子も私と同じように注意するようになってしまい、心配しています。

 課題に集中することができないお子さんへの対応について、考えてみましょう。
@まず、お子さんの状態を理解しましょう。
 情緒が不安定だったり学力が遅れていたり、行動をコントロールする力が弱かったりすると課題への集中が難しくなります。ご相談の内容からは、行動をコントロールする力が弱いお子さんのようですね。このようなお子さんは、周りの刺激に反応しやすいために気が散りやすく、課題に最後まで取り組むことが難しいことがあります。そのため、周りからは怠けているとも受け取られがちです。しかも先生だけでなく友達にまでも注意されることで、お子さんの受けるストレスは大きく、状況は一層悪循環になってしまうでしょう。Aお子さんに合わせた目標を立てましょう。
 集中する時間を延ばすために、「五分間は取り組む」「半分したら見せに行く」など、無理なく達成できる目標を立ててみましょう。「がんばり表」を作成して努力していることをほめたり、励ましたりすることも大切ですね。まずは、達成できる目標づくりから始めましょう。
B子どもは教師の言動をまねるものです。
 周りの子との関係を調整することも大切です。子どもは、先生のかかわり方を見て同じようにかかわろうとします。まず、注意を減らし、音読や計算などお子さんの得意なことを活かせる場面で、皆の前でほめるようにされるといいですね。先生が長所を認めるかかわりをすることで、周りの子もその長所を認め、お子さん自身も自信をもつことができるでしょう。
C周りの人に相談しましょう。
 一人で悩まず、他の人の意見を聞いてみることも大切です。集中しやすい教室環境づくりや、授業内容の工夫、集中できる時間を考慮した課題など、同僚の先生方と相談し、また、それを保護者に伝えながら取り組みましょう。子どもへの支援について学年会や校内委員会などで話し合ってもらうこともよいでしょう。当センターでは、気がかりな子を支援する校内支援体制づくりのお手伝いをしています。お気軽にご相談ください。
(福井新聞 平成18年5月29日掲載) 

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 アスペルガー症候群診断の中1「の生徒 担任のかかわり方は
アスペルガー症候群の診断のある生徒(中学一年生、A君)の担任をしています。A君は親しい友達ができず「友達が欲しい」と訴えてきます。特定の友達にしつこくかかわりを求めたり、自分の好きなゲームの話を一方的にしたりします。本人に注意をするのですが、変わりません。担任としてどのようにかかわるとよいでしょうか?

 担任としてお悩みのことと思います。どのように対応していくとよいのか一緒に考えてみましょう。
@アスペルガー症候群について
 アスペルガー症候群は自閉症の一つのタイプです。知的な発達にも、ことばの発達にも遅れはありませんが、相手の気持ちや周囲の状況を読みとることが苦手です。彼らは、コミュニケーションや社会性に障害があり、人との関係性がうまくとれなかったり、興味や関心が狭く特定のものにこだわったりする自閉症特有の特徴をもっています。特定の友達にしつこくかかわり、ゲームの話を一方的に話すというA君の行動は、相手の気持ちを理解することが苦手な自閉症の特性なのでこのことを理解した対応が望まれます。
Aふさわしい行動を教えましょう。
 まずは、先生自身がA君の話し相手になり、友達が欲しいという気持ちをよく聞いてあげましょう。そのことでA君の気持ちが満たされ、友達への負担も軽くなるのではないでしょうか。
 一方、不適切な行動については、注意するだけでなく適切な振る舞い方を教えていくことが効果的です。特定の友達にしつこくかかわる場合は「友達はどんな気持ちかな?」と相手の気持ちについて考えさせ、「友達が『やめて』といったらついて歩くのはやめたほうがいいよ」とできるだけ個別的な対応を通して教えることが大切です。B周囲の理解と協力を得ましょう。
友達には、A君の行動には悪気がないことや、嫌な時は「やめて」とはっきりことばで伝えること、さらに、先生がモデルとなりA君へのことばかけを周囲に示すことも大切となります。
 また、A君の友達が欲しいという気持ちを汲んで学級での仲間づくりの取り組みも必要となります。A君に学級の中で活躍の場を与えて、友達から認められたり感謝される経験を積み上げたりしましょう。また、学校のクラスメートがお互いのよさを認めあえる経験の場をグループエンカウンターやロールプレイなどの手法で設けることも一つの方法でしょう。  
 A君への支援を考えていくに当たっては担任の先生が一人で抱え込まず教育相談や生徒指導、学年主任などに相談し、学年会でも意見を聞くなどしてチームで考えて支えていくことが大切です。
外部の専門家として当センターでは発達障害の子ども達の理解・支援についてサポートをすることができます。お気軽にお電話ください。
(福井新聞 平成18年10月30日掲載) 

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 友達と遊ばない、慣れない課題に参加しにくい5歳児へのかかわり
5歳児の娘の母親です。娘は身の周りのことは自分ででき、会話もできますが、いくつか気になることがあります。通っている保育園では一人で遊ぶことが多く、文字を書いたり絵を描いたりする活動には参加しようとしません。就学すると、先生や友達との関係、勉強など、新しい環境や課題に出合うだろうことが予測され、とても心配です。

 お母さんは、家庭や保育園での様子から、就学後の学校生活について不安を感じておられるようですね。慣れない場所や課題を嫌がることが多いお子さんが、学校でのいろいろな活動に取り組むことができるのか御心配のことでしょう。
@遊びや行動のレパートリーを増やしていきましょう。
 一人で遊ぶことが多い子は、友達との遊び方が分からないので一人で遊ぶ方が安心できる、という場合が多いようです。まず、お子さんの好きな遊びを尊重してあげて、その遊びを一緒に楽しんでみましょう。遊びの中でお母さんとのやりとりができるようになると、「相手がいる遊びが楽しいな」と思うようになってくるでしょう。それに慣れてきたら、ブロック遊びや砂遊びなど、友達がやっている遊びに誘ってあげて、できれば一緒に遊びを体験できるとよいでしょう。このように、人とかかわって遊ぶ楽しさを味わう体験を増やしていけるといいですね。
A苦手なことは、成功体験を積みながら、ゆっくりと。
 例えば文字は読めるのに文字を書くことが苦手な場合は、不器用さから鉛筆などの筆記用具を自在に扱えないという状態が考えられます。そのような場合は、太いマーカーや絵筆などでの塗り絵や、迷路などの簡単な運筆練習から始めてみましょう。それも難しいようならば粘土遊びや簡単なお手伝いなど、お子さんが安心して取り組めて必ず成功する、という課題から少しずつ始めてみましょう。「これならできそうだ」「うまくできた」と感じると、毎日楽しく取り組めるようになります。  
Bみんなで一緒にかかわっていきましょう。
 お子さんは、家庭だけでなく一日の大半を園で過ごしています。ご家庭と園とでお子さんへのかかわり方を連絡しあって、一緒に考えていきましょう。当センターでは通所による個別の指導や相談の他に、就学前の子どもさんを対象とした「小集団指導」も行っています。お気軽にご相談ください。
(福井新聞 平成19年4月16日掲載) 

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 AD/HDの5年生男児へのかかわり
小学5年生A君の担任です。A君は幼い頃から多動で落ち着きがなく、低学年の時にAD/HDの診断を受けました。A君を担任するに当たり、発達障害について研修を受けたり、先輩に相談したりして、A君へのかかわり方を工夫してきました。しかし、5年生になり些細なことで友達とけんかになることが多く、最近は、周囲から敬遠され、休み時間は一人で過ごしています。担任としてA君にどのようにかかわったらよいでしょうか。
 高学年になり、けんかが絶えないA君への支援について一緒に考えていきましょう。
@A君の今の状態について理解しましょう。
 AD/HD(注意欠陥多動性障害)は、一般的に、「落ち着きがない、衝動的、多動」という特徴がありますが、「ぼんやりしている、おとなしい」など多動のない子もいます。A君は、高学年になるにつれ、多動が目立たなくなってきた反面、思ったことを言ってしまったり、手が出てしまったりするなど、よい人間関係をつくることが苦手なようです。本当はみんなと仲良くしたいのに、けんかになってしまうのかもしれません。
AA君にとって第一の支援者になりましょう。
 最大の支援者は保護者ですが、学校では担任が第一の支援者です。まずは、A君の思いをじっくりと聴いて、受け止めてあげましょう。
 学校でトラブルが起きた際、なぜいけなかったのか、どうしたらよかったかを、A君と一緒に考えてみましょう。ソーシャルスキルカードを使って、マナーやルールなどを繰り返し教えていくことも効果的です。
 かっとなった時に、深呼吸をするとか、自分を落ち着かせることばを言うなど、気持ちを切り替える方法を一緒に探してみてはどうでしょうか。A君が適切な言動を積み重ねていくことで、本人の自信へと繋がっていくと思われます。
B周囲の理解と協力を得ましょう。
 まずは、担任がA君への適切なかかわり方を示し、周囲の理解を得ることが必要です。
 学級では、誰でも得意なことや苦手なことがあることを話し合ったり、助け合うことの大切さを考えたりするとよいでしょう。お互いの個性を認め合い、協力する学級をつくりましょう。
 さらに、学級での様子を保護者に伝え、協力を得ることも大切です。
 当センターでは、発達障害の子ども達の理解・支援についてサポートをすることができます。お気軽にお電話ください。
(福井新聞 平成19年10月1日掲載) 
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 発達遅れの子 就学先が心配
現在、保育園に通う4歳児の息子がいます。ことばや生活に発達の遅れがあるものの、元気に通園しています。2年後には就学なので、今から学校のことを考えておきたいと思っていますが、障害のある子どもの就学先がよく分からず、心配です。どのようにしたらよいでしょうか。
 今後の教育的支援を考えていくためには、情報を早くに得ること、さらに関係機関と相談することが大切です。しかし、必要な情報を得る機会が少なく、さぞご心配のことと思います
@学校の情報を集めましょう
 障害のあるお子さんの就学先としては、地域の小学校と特別支援学校(盲・ろう・養護学校等)があります。また、小学校によっては、特別支援学級や通級による指導(通級指導教室)があります。通常学級においても、特別な教育的支援を必要とするお子さんに、さまざまな配慮のもとで教育がなされています。
 特別支援学校では、毎年、学校見学会や体験入学を実施しています。相談にも応じていますので直接、特別支援学校にお問い合わせください。
 特別支援学級は、各市町の教育委員会を通じて見学することもできます。通級による指導とは、通常学級に籍を置きながら個別の指導が受けられるものですが、県内には数少ないのが現状です。
 まずは、園の先生と相談しながら、実際に保護者の目と耳で地域の学校の情報を集めることが大切です。先輩の保護者の経験を聞くのもよいでしょう。

A就学先が決まるまでの流れを知りましょう
 就学については、各市町の教育委員会が窓口となって進めます。教育委員会では、5歳児のお子さんを対象に就学相談を6月から8月にかけて行っています。相談の機会については、園の先生やお住まいの市町の教育委員会にお問い合わせください。各市町には、医師、学識経験者、教育・福祉関係者などの専門家で構成される委員会があり、お子さんの行動観察や発達検査、保護者との面談等を行い、適切な教育的対応や就学先について総合的に検討します。
 就学先の選定については、保護者との十分な話し合いを通して行われますので、ご安心ください
。  
B就学先が決まったら、具体的に学校での生活を考えてみましょう
 学校生活をスムーズに始められるように、通学方法や放課後のことも考えましょう。各学校では、特別支援教育コーディネーター等が相談窓口となります。
 当センターでは、こうした関係機関への連絡や就学の相談に応じることができますので、お気軽にお電話ください。


県特別支援教育センター=0776(53)6574
県教育庁嶺南教育事務所特別支援教育課=0770(56)1095

(福井新聞 平成20年4月5日掲載) 
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 集団行動を嫌がる園児への対応
4歳児担当の保育士です。A君は、家庭では特に気になることはないと聞いていますが、保育園では友達をたたいたり、ゲームに参加するのを嫌がったりしてうまく遊べません。どうしたら一緒に活動に参加できるでしょうか。

 幼児は他児とのかかわりや遊びを通して、ことばや社会性など成長に必要な大切なものを学んでいきます。A君がなぜ集団活動を嫌がるのかその理由を理解し、どんな支援が必要なのか一緒に考えていきましょう。
@参加できない行動の理由を理解しましょう。
 家庭ではお母さんが個別にわかりやすく伝え、そばで見守ってくれるので、子どもは安心していろいろな活動に取り組めますが、保育園ではたくさんの子どもたちと一緒の活動がほとんどです。
 先生の指示を聞きとることや集中して話を聞くことが苦手なお子さんの場合は、指示を理解できず一緒に活動できないことがあります。また、ことばでの意思表示が充分にできない時や順番の見通しがもてない時は、いらいらしてつい手が出てしまうこともあります。
A安心して参加できる環境をつくりましょう。
 指示は一度にたくさん出さず、理解しやすい簡潔なことばで伝えるようにしましょう。
 絵や写真カードなどの視覚的支援、始めと終わりがわかる合図など、活動の見通しがもてるような手立てを工夫すると、安心して参加できることが増えると思われます。
 また、無理に集団活動に参加させようとせず、A君が好きな活動に周りの子を誘うことで、みんなと活動を楽しめるかもしれませんね。  
B友達と一緒に遊ぶ楽しさや自信がもてるような支援を工夫しましょう。
 トラブルがおきやすい自由遊びではできるだけそばにいて、友達をたたくのでなく「貸して」のように適切なことばで自分の思いを伝えることを教えてあげてください。
 集団でのゲームは最初は簡単なルールにして、楽しめるようになったらルールを増やしていくとよいでしょう。
 負けることへの不安が強い子には、勝ち負けがないゲームを通して、友達と一緒の活動は楽しいと思える経験を積ませることも大切です。
 保護者とは連絡を密に取り合い、集団活動に参加できた時には、家庭でもほめてもらってください。それが大きな励みとなり、自信や活動意欲につながると思います。  
 当センターは、園や学校で発達や集団活動面で気がかりさのあるお子さんを対象に、相談や教育指導を行っています。お気軽にご相談ください。
(福井新聞 平成20年6月14日掲載) 

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 アスペルガー症候群診断の小6の児童 中学校生活に向けて
アスペルガー症候群の小学校六年生の母親です。これまで、いろいろなトラブルがありました。それでも、担任の先生の配慮により、比較的穏やかに学校生活を送ってきました。四月から中学生です。教科によって先生が替わることや部活動など、学習や生活が一変するので、中学校生活が混乱なく始められるかとても心配です。
 アスペルガー症候群の子どもは、相手の感情や状況を考えられない、日課や手順にこだわり変更や変化を嫌がるなど、対人面や行動面で困難さを抱えています。中学校への進学時、多くの子どもが、学習や生活の変化で不安やストレスを感じます。アスペルガー症候群の子どもにとっては一層のことです
 お子さんの場合、小学校で穏やかな学校生活を送ってこられたようですね。担任の先生が、適切な支援を行ってくださっていたことがうかがえます。この支援がうまく中学校に引き継ぎ(以下移行支援)されれば、進学に伴う移行期の大きな環境の変化をなだらかなものにできます。
@小学校での支援を中学校に伝えましょう
 各学校では、特別支援教育を推進する特別支援教育コーディネーター(以下特コ)の先生が指名されています。この特コの先生が中学校との支援の引き継ぎの場(以下移行支援会議)を設定してくれます。二〜三月頃に設定してもらってはどうでしょう。移行支援会議に保護者もなるべく同席し、支援についての希望を直接伝えるようにしましょう。
A引き継ぎの文書を作成してもらいましょう
 引き継ぎのための資料があると、移行支援会議は円滑に進められます。
 引き継ぎの文書には、学習面、生活面、行動面などの特性と、それに対する支援を記入してもらいます。文書作成に際し、得意な面や家庭での様子、本人や保護者の願いも伝えるとよいでしょう。これらは、学級編成、係活動、部活動などを決める際の情報になり、中学校生活を過ごしやすくするために役立ちます
。  
B入学後にも移行支援会議を行いましょう
 移行支援をより確かなものにするため、入学後の五〜六月頃にも、移行支援会議を設定してもらいましょう。特コや担任を交え、お子さんの現在の学校や家庭での状況を確認し、今後の支援について話し合いましょう。できれば、小学校の時の担任にも出席してもらえるとよいですね
 移行支援については、当センターやお近くの特別支援学校にお気軽にご相談ください。

(福井新聞 平成21年1月31日掲載) 
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 小1の娘 登校渋るように
4月に小学校に入学した娘の母親です。保育園では、ことばで気持ちを伝えることが苦手で、環境が変わると落ち着くまでに時間がかかる子でした。当初元気に通っていたのですが、最近、目をぱちぱちさせたり、登校を渋ったりするようになり心配です。どうすればよいでしょうか?
「先生は味方」伝えよう
 小学校は保育園と生活が随分違います。どのお子さんも最初は戸惑うことがありますが、徐々に慣れていきますので、焦らずゆったりと見守ってあげることが大切です。しかし、登校を渋るようになるとお母さんもご心配でしょう。
@ 家庭ではゆったりと過ごさせてあげましょう。
 新しい環境が苦手なお子さんですと、初めての学校生活にストレスを感じていることが考えられます。保育園との違いに戸惑いながら緊張して過ごしているのでしょう。
 家庭では、お子さんの好きな活動で気持ちを切り替えたり、お子さんの話をじっくり聞いて気持ちを楽にしてあげたりしてください。

A 今後のことを学校と家庭で一緒に考えましょう。
 気がかりなことがあった時には遠慮なさらずにすぐ相談することが重要です。まずは、担任の先生に家庭での様子やお母さんが心配なことなどを伝えましょう。また、お子さんの学校での様子を先生に聞いてみましょう。家庭では気がつかないことを知ることもあります。
 その上で、お子さんが何にストレスを感じているのか先生とよく話し合ってください。例えば、一日の見通しが持てるようにスケジュールを提示してもらったり、活動する前には個別に声かけをしてもらったりすると安心するかもしれません。
 また、学校で困った時やつらくなった時は、先生が助けてくれることをお子さんに教えてあげてください。初めは先生から声をかけていただくようにするとよいですね。 お子さんの気がかりなことについて、学校と一緒に考えることは大事なことです。学校には、担任の先生以外にもお子さんのことについて相談に応じてくださる先生がいます。
 当センターも、ご相談をお受けできますのでお気軽にご相談ください。

(福井新聞 平成21年4月25日掲載) 
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 算数苦手の息子 教えるコツは?
小学二年生の息子をもつ父親です。活発で友達も多いのですが、算数がとても苦手です。夏休みの宿題も、時間がかかったり間違えたりするので、ついしかってしまいます。一年生の頃から、わからないことが多かったようです。どのようにみてやればよいでしょうか?
つまずきは何か考えて
 夏休みは、旅行や毎日の手伝いなど、普段とは少し違った体験を通して成長が期待される時期です。何より、お子さんにとって楽しい夏休みにしてあげてください。
 さて、御相談では算数がとても苦手、ということですね。宿題や生活の中で、算数の苦手さの基になるようなつまずきは何か、考えてみましょう。

@ 『わらない』ところはどこでしょう?
 数字を見て、大小がわかりますか?一から百まで数えることができても、数字を見ただけではすぐに物の個数を思い浮かべられないのかも知れません。生活の中で「六個ずつ分けようね」などと、数字と物の数を結びつけるようなやりとりを通して、数の概念を育てることも大切です。
 文章問題を読んで、式を立てられますか?計算はできても、文章題を読んで式を立てられないお子さんもいます。「加える」などのことばの意味がわからないのかも知れません。実際に絵や動作で示して、たし算に結びつけてあげましょう。
 
宿題等の様子から気がついたことを、学校の先生に伝えてください。学校には、担任の先生はもとより、お子さんのことを一緒に考えてくださる先生がいます。
A 『できた』という実感を大切にしましょう。
 
苦手分野を克服させたいと思うあまりに、つい厳しくしてしまうこともありますね。そのことでお子さん自身も「苦手だな」「嫌いだな」と思い、学習意欲を失ってしまいかねません。それより少しでも「よくがんばっているね」と応援してあげてください。そして、できたときには、大いにほめて自信をつけてあげましょう。それが次の学習意欲につながります。
 当センターでも御相談をお受けできますので、お気軽に御連絡ください。

(福井新聞 平成21年8月15日掲載) 
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